毎シーズンの流行が懸念されるインフルエンザに際し、あらかじめ予防接種を受けておく方は多いでしょう。
しかし予防接種は「インフルエンザ感染を完全に予防できるもの」ではありません。あくまでも症状・経過の安定による早期回復を期待するものであり、万が一罹ってしまったときは通常通りの自宅療養が必要です。
今回は、選択肢のひとつである「インフルエンザ予防内服」について解説します。インフルエンザ予防内服とは、インフルエンザ感染を高い確率で予防できる薬です。
予防接種と併用することで7~8割という高い感染予防効果を発揮するので、「絶対にインフルエンザに罹りたくない!」という方は検討してみましょう。
インフルエンザ予防内服のメリット
まずは、インフルエンザ予防内服のメリットを解説します。
アメリカでは2020年から抗インフルエンザウイルス剤であるゾフルーザの予防投与が認められるなど、適用の幅が広がりました。日本ではまだ適用外処方の扱いですが、メリットを正しく理解し、検討材料としていきましょう。
インフルエンザに感染する前から内服できる
インフルエンザ予防内服は、その名の通り「予防」を目的とした薬であるため感染前から内服できます。
そのため、そもそもインフルエンザに感染すること自体を予防できるのです。100%の効果を発揮するものではありませんが、予防接種と併用すれば7~8割の感染予防効果が見込まれており、安心材料のひとつとなるでしょう。
そのため、重症化リスクの高い方が検討することが多いです。
内服薬なので身体的な負担が少ない
内服薬なので注射をする必要がなく、また入院や長時間かかる処置・検査も要らないことから、身体的な負担が少なめです。
経口薬もしくは吸入薬なので、お子様や高齢の方でも使えます。また、インフルエンザ予防内服には複数の種類があります。
「複数回通院する負担を避けたい」「なるべく吸入薬がいい」など希望があれば、医師に相談しながら薬を選定していきましょう。
「絶対罹りたくない」ときの切り札として使える
インフルエンザ予防内服は、「絶対にインフルエンザに感染したくないとき」の切り札として使えます。
予防接種と併用することで高い効果を発揮するので、安心材料のひとつとして検討するのもよいでしょう。「大切な日を万全の体調で迎えたい」と考えるのであれば、重症化予防に+αしておくのもひとつの手段です。
インフルエンザ予防内服のデメリット
一方で、インフルエンザ予防内服はメリットだけとは限りません。デメリットもあるので、メリットと見比べながら使用を検討する必要があります。
保険適用外なので自費扱いになる
インフルエンザ予防内服は保険適用外であり、全額自費での負担が求められます。
医療機関や使用する薬により金額は異なりますが、初診で相談した場合は1万円前後かかることが多いでしょう。
「毎年利用するには家計に与える負担が大きいかもしれない」「家族全員が使うには高額に感じる」というケースもあるので、気になる方はかかりつけ医と費用を相談しておく必要があります。
フルシーズンの効果は見込めない
インフルエンザ予防内服は基本的に投与期間中にのみ予防効果が期待できるものであり、フルシーズンの効果は見込めません。
つまり、薬を使用している短期間にだけ効果が発揮される、ということです。予防接種のように1シーズン中1回受けておけばいいものではないことを理解し、ある程度期間を狙って内服する必要があります。
薬により細かな期間は異なりますが、およそ7~10日程度を想定しておくとよいでしょう。
医薬品副作用被害救済制度の対象になっていない
インフルエンザ予防内服は適用外処方であり、万が一重い副作用が起こっても医薬品副作用被害救済制度の対象になりません。
稀なケースではありますが、補償を受けられないデメリットを理解したうえで服用することが大切です。
心配な場合はかかりつけ医と相談し、納得できるよう検討していきましょう。
インフルエンザ予防内服を検討するのはどんなとき?
最後に、インフルエンザ予防内服を検討するシーンを紹介します。
どんな方が検討することが多いのか知りたいときも、下記をご参考ください。
同居家族や職場にインフルエンザ感染者が出たとき
同居家族や職場など近しい環境でインフルエンザ感染者が出たとき、早めにインフルエンザ予防内服を使うのが有効です。
感染者との接触から48時間以内に投与することで高い効果を発揮するという研究もあるので、判明した段階で医師に相談するのがよいでしょう。
「家族全員インフルエンザになって生活に困った」「部署の半数がインフルエンザにかかってしまい業務が回らなくなった」などの苦労を防ぐためにも、インフルエンザ予防内服が選択肢のひとつとなるのです。
受験など絶対に体調を崩したくない日を控えているとき
絶対に体調を崩したくない日を控えているときに、当日から逆算してインフルエンザ予防内服を投与することができます。
例えば、第一志望の試験日が近い受験生・重要なプレゼンテーションを控えているサラリーマン・これから海外渡航しようとしている方などが挙げられます。
他にも、スポーツの試合・コンサート・ライブ・結婚式など「振替できない日」を控えている方も、万全の体調管理をしたいものです。事前にインフルエンザ予防内服をしておくことで、少しでも予防効果を高めることができるのです。
また、「同居家族に受験生がいるから自分がインフルエンザになるわけにはいかない」など、家族が検討することもあります。近しい範囲に応援したい方がいるときも、インフルエンザ予防内服が選択肢のひとつとなるでしょう。
高齢者・基礎疾患があるなど重症化リスクが高いとき
高齢者・気管支喘息など呼吸疾患がある方・慢性の心臓病や代謝性疾患のある方など、重症化リスクの高い方がインフルエンザ予防内服を受けることも可能です。
フルシーズンの効果が見込める薬ではないので、特に人出の多い場所に行くときや親戚が集まって会食するようなときから逆算して使うのがよいでしょう。
旅行に出かける前・クリスマスや年末年始など人が集まる前などに検討する方法もあります。同じく「介護をしている両親の体力が落ちてきている」「同居家族に基礎疾患のある人がいる」など、家族が検討することもできます。
まとめ
インフルエンザ予防内服は、インフルエンザへの感染を高い確率で防ぐ効果が期待できる薬です。受験・試合・商談など振替できない日を控えている方は、予防接種と併せて検討してみましょう。
また、かかりつけ医と相談しながらメリット・デメリットを正しく理解し、納得してから内服することも重要です。シーズン中ずっと効果が継続するものではないこと、また短いスパンで繰り返し内服する前提のものではないことを考慮に入れ、タイミングを図ることをおすすめします。